便秘について
『慢性便秘症診療ガイドライン』では、便秘の定義として「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。排便が数日以上ないだけでなく、快適かつ満足な排便が出来ない状態も便秘とされます。排便が毎日ある場合でも、残便感や、排便後のスッキリ感がない場合、固くて強くいきまないと出ない場合、少量しか出ない場合は便秘とされます。また、薬を服用しないと排便できなかったり、便秘と下痢を繰り返したりする場合も便秘に含まれます。
便秘外来について
便秘にお悩みの方が、医療機関を受診していることはなかなか少なく、市販薬で症状を回避させている方が多いようですが、次第に頑固な便秘へと悪化させるケースも多いようです。便秘は、日常的な症状として軽視されがちですが、慢性化させることで、重大な疾患へとつながる恐れがあるので注意が必要です。便秘外来では、便秘の原因を探り、患者さんに適した治療方法を行っています。便秘を放置しておくことで、痔の発症リスクが高くなり、とくに女性は便秘で強くいきむ習慣がつくことで、骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁などの発症リスクが高まってしまいます。便秘が気になる方や便秘の症状を繰り返している方は、一度当院にお気軽にご相談ください。便秘外来で専門的な治療を受けることをおすすめしています。
こんな症状がある方はご相談ください
- 便が少量しか出ない
- 便が硬い
- 便意がない
- 無理に便を出す
- 排便後のスッキリ感がなく、残便感がある
- 強くいきまないと出ない
- お腹が張る
- 便秘薬を服用しないと排便できない
- 便秘薬の服用量が増えた
- 便秘と下痢を繰り返す
便秘の原因
食事や水分の摂取量が十分でない場合や、生活環境や生活リズムの変化、運動不足、大腸の機能低下、糖尿病や甲状腺機能低下症などの疾患の症状、薬の副作用などが原因で便秘の症状が現れます。とくに、便秘は女性に多く、若い世代から高齢の方まで幅広い年代で発症しています。なんらかの疾患の症状として便秘がある場合は、できるだけ早い段階で便秘を改善する必要があります。便秘についてお悩みのことがありましたら、当院までご相談ください。
便秘の種類
機能性便秘
便秘は原因によってタイプが分類されます。機能性便秘は、排便機能の低下と直腸の排便反射低下が原因で引き起こる便秘です。
- 排便機能低下:腹圧・腸管の蠕動運動機能低下・異常な亢進
- 排便反射低下:直腸まで便があるのに明確な便意を感じられない状態
さらに、機能性便秘は、便の腸管通過時間と排便機能によっていくつかのタイプに分類されます。
結腸通過時間正常型
便意が低下しているため、直腸まで便が来ているのに排便のタイミングが分からなくなって引き起こる便秘です。
結腸通過時間遅延型
大腸の蠕動運動機能低下によって、便が直腸まで来るのに時間がかかって引き起こる便秘です。
便排出障害型
排便機能低下によって、いきんでもスムーズに便が出てこない状態です。
続発性便秘
なんらかの疾患の症状としての便秘や、手術などの合併症、薬剤の服用による副作用として起こる便秘を続発性便秘と言います。
器質性便秘
腸管の閉塞や狭窄によって、便秘が起こっている状態です。がんによって大腸が圧迫されたり、閉塞したり、また手術後の癒着でも便秘が起こります。緊急手術が必要になる場合があるので、注意が必要です。
肛門直腸疾患
切れ痔が進行すると、肛門狭窄となり排便がしにくくなります。便秘のため硬い便をいきんで出すことで肛門が切れ、切れ痔の痛みから便意を我慢するうちにさらに便秘になるという悪循環を引き起こします。
病気や薬の影響(副作用)
筋疾患や神経疾患の症状のひとつに便秘の症状があります。薬剤の副作用としては、降圧剤や糖尿病、甲状腺機能低下などの内分泌・代謝異常の治療薬・向精神薬など多くの薬剤の副作用に便秘が現れやすいとされています。
便秘外来の診察と検査
診察
丁寧な問診と触診、検査などで便秘の原因を探っていきます。便秘の程度として、便意の起こる頻度や排便回数、状況、お腹の痛みや張り、生活習慣、現在服用しているお薬、これまでの既往症などを細かく伺っていきます。原因を推測して、患者さんに適切な治療方法をご提案、分かりやすく説明していきます。
検査
腹部の聴診と触診、腹部X線検査、大腸カメラ検査、血液検査などを行います。当院では、苦痛の少ない大腸カメラ検査を実施しています。腸管の狭窄・閉塞、粘膜の状態、腸管の長さなどを直接確認でき、ポリープや大腸がんなどを発見することができます。検査中にポリープや早期大腸がんが発見された場合は、その場で切除が可能なことも多く、また組織を採取できるので確定診断に結びつきます。
便秘の治療
生活習慣の改善
食生活や運動不足を改善していきます。水分や食物繊維をしっかりと摂取すること、適度な運動を行うことで便秘が改善していきます。また、決まった排便習慣を身に付けるようにし、便秘になりにくい習慣を作ることが大切です。無理のないことから日ごろの生活習慣を改善することは、便通を促すことが重要です。
薬物療法
便秘の症状や程度、タイプ、ライフスタイルなどから患者さんに適した薬を処方していきます。効き目は個人差があるため、まずは2週間を目安に服用していきます。効果や体調などで薬を調整していきながら、最適な処方とタイミングを見極めます。また、漢方薬を組み合わせることも有効です。便秘に関するお悩みや不安な点がありましたら、当院にお気軽にご相談ください。便秘をスムーズに解消できるよう、患者さんに寄り添いながらお話を伺います。