下痢について
便の水分が異常に増えて、液状の便を下痢便、通常よりも柔らかい状態を軟便と言います。この下痢便や軟便が続き、腹痛や腹部不快感がある状態を「下痢」と言います。一般的には、水のような便が出る、お腹が痛くなる、熱が出るなどの症状が多く、症状によっては、命の危険を伴う疾患が原因の場合があるので注意が必要です。
医学的には、含水量が60~70%以上の便が200ml以上/日、3回以上出る状態が「下痢」とされています。下痢の症状が気になる方や不安な方は、お気軽に当院にご相談ください。
下痢の種類
下痢は、急性下痢と慢性下痢とに分けられますが、そのほか下痢の症状が起こる原因やメカニズムによって以下のように分類されます。
①浸透圧性下痢
下剤やアルコールなどの高浸透圧性物質が腸管内に多量に存在するため、水分が腸管内に移動して起こる下痢です。腸管から水分が吸収されないので、便が多量の水分を保持した状態です。
②分泌性下痢
細菌が産生する毒素やホルモンなどの影響で腸管内に過剰に水分が分泌されることで起こります。感染性腸炎・非吸収性脂肪の過度な摂取などが原因となります。
③滲出性下痢
腸粘膜が炎症を起こしたり腸粘膜を傷つけるような病原体に感染したりすると、腸液の分泌が増え、水分の吸収が低下します。このようなメカニズムで生じる下痢です。潰瘍性大腸炎やクローン病なども原因となります。
④腸管運動異常による下痢(腸運動の亢進による)
過敏性腸症候群や甲状腺機能亢進症など、腸管運動が亢進して引き起こる下痢です。腸の蠕動運動が過剰になるため、便の運ばれる速度が速くなるのが原因です。
⑤腸管運動異常による下痢(運動低下による)
糖尿病性神経障害・アミロイドーシス・消化管平滑筋障害によって、腸管運動が低下するのが原因で起こる下痢です。腸内細菌の異常な増殖など、腸の脂肪や水分の吸収障害が起こります。
下痢の原因からの分類
生活習慣
暴飲暴食などの食生活の乱れ、アルコールの過剰摂取
機能に問題が起こる
大腸に異常がないのに下痢が起こる過敏性腸症候群など
薬剤によるもの
下剤や抗生物質、抗がん剤など
腸管感染症
病原性大腸菌・ロタウイルス・アデノウイルス・黄色ブドウ球菌・アメーバ赤痢・クロストリジウム腸炎・キャンピロバクターなど
腸管の器質的疾患
潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患、命にかかわる大腸がんなど
腸管外の器質的疾患
糖尿病・アミロイドーシス・甲状腺機能亢進症・ホルモン産生腫瘍など
下痢の検査
慢性下痢や重度の下痢、出血を伴う下痢、炎症性腸疾患などが疑われる場合、問診・腹部の触診・聴診をはじめ、必要に応じて以下のような精密な検査を実施しています。
- 便の採取による細菌培養
- 血液検査
- 肛門指診
- 肛門鏡検査
- 大腸カメラ
- 腹部超音波検査(エコー検査)
- 腹部CT検査
下痢の治療
下痢の程度や種類によって、原因を突き止めて適切な治療を行っています。下痢による脱水状態を防ぎ、必要に応じて整腸剤や抗生物質などの服用、食事指導などを丁寧にご説明します。脱水がある場合、強い炎症が見られる場合、水分補給が難しい場合は入院が必要ですが、当院で対応可能です。